
助成金・補助金と称され、主として公的機関により実施されているこれらの制度は、融資とは違い返済不要の資金です。
国等では、大企業と異なり資金調達手段に限りのある、製品の研究開発などを目指す中小企業に対し、中小企業施策の一環として、さまざまな助成制度を実施しています。
事業の拡大を目指す企業にとって、自社の研究開発テーマに見合う助成金(補助金)制度を選択・申請し、いかに活用できるかが非常に重要なテーマとなります。
助成金制度には、大きく分けて次の2種類があります。
■雇用関連の助成金制度<厚生労働省など>
創業(新規事業進出)時における人材の確保や雇用の維持(定年延長等)に対し、人件費の補助を行うものが中心です。
受給するために細かい要件を満たす必要がありますが、要件を満たすことでほぼ
100%受給が可能です。
■技術研究開発・新製品開発(ものづくり)などの取り組みに対する助成金(補助金)制度<経済産業省や財団等の企業支援機関>
同じ助成金制度と言っても、ものづくりなどの研究開発が対象となる制度(以下、「研究開発型助成金」)は上述の雇用関連型の助成金制度とは全く異なるものとなります。
雇用関連型の場合、事実内容を申請書への所定の記入欄に記述してゆくことから、誰が作成してもほぼ同じような内容となり、記載者の違いが採択の結果に及ぼす影響は殆どありません。
一方、研究開発型助成金(補助金)制度の場合、記述事項はほぼ自由記入となり、記述方法や記述内容の違いが採択結果に大きな影響を与えます。
研究開発型助成金制度の特徴
申請書作成上のポイント
助成金の上手な活用方法

新たな技術・研究開発や新製品・商品開発(ものづくり)などの新規事業に対する助成金(補助金)制度の活用にあたって、先ずは制度の特徴を確認しておきましょう。
■募集時期(申請期間)
一般的に雇用関連型の助成金の場合、ほぼ通年で募集が行われているのに対し、研究開発型の助成金は一定期間限定(約1ヶ月程度)で募集が行われます。
募集受付の前に助成主体となる機関のホームページ等で発表が行われます。国の予算との関連から、受付期間は4月前後を中心としたものが多くなっています。
従って、常日頃から、自社の研究開発等に対する受給可能性が高いと思われる助成金の募集要件のチェックはもちろん、募集情報に対してもアンテナを張っておかなければいけません。
意識的に情報収集に取り組まない限り、殆どの場合、申請の機会を逃してしまうといえるでしょう。
研究開発や新製品・商品開発・経営革新事業への助成金・補助金募集情報
■対象となる企業
一般的に法律で定める中小企業であれば、業種を問わず申請することは可能です。
補助金の対象で研究開発費や商品開発費を対象としているケースが多いことから、申込み機会は製造系業種が多いといえますが、「経営革新計画の認定企業への補助金制度」などでは、小売業・サービス業も含めた幅広い業種で利用可能となります。
■対象となる事業費(経費費目)
●直接人件費
対象となる研究開発等のプロジェクトに関与する従業員のものが対象となります。
この場合、厚生労働省関連の人件費の支給要件でよく見られる新規雇用等に関わらず、既雇用従業員の人件費も対象となる点が特徴的です。
※外注費のみを対象とする場合など、制度によって取り扱いは異なるので、取り扱いに注意が必要。
●機械装置等の賃借・購入費
●試作・研究開発等に伴う諸経費
●その他の費用
特許取得に伴う費用、出張旅費、マーケティング調査費、広告宣伝費など
■提出書類
(1)事業計画書および補足説明資料
事業(申請)者の概要、事業計画およびその明細、経費明細 等
プロジェクトの実施に至った背景に始まり、事業の新規性(差別性)や成長性(市場開拓見込みなど)、事業スケジュール等、その詳細を記述します。
補足説明資料等は任意添付となってるケースが多いですが、申請書本体のみの限られた記述では、プロジェクト内容が質および量とも正確に伝え切れず、実質的に補足資料の添付は必須と言えましょう。
この結果、補足説明資料を加えた事業計画関連資料のボリュームはA4用紙で20〜30頁程度が目安と言え、申請者は限られた期間内(1ヶ月程度)で、これらの書類作成を行う必要があります。
このことから、受付期間前からの事前準備(関連情報収集、事業スキームの構築等)をしっかり行うことが重要となります。
(2)企業情報に関する書類
直近の確定申告書、決算書 登記簿謄本 等
上記に加え、納税証明書や課税証明書の提出を求められることもあります。
助成金はもちろん、融資等の公的支援策を受けようとする場合、原則、税金類の完納が条件になります。
■選考方法
(1)資格審査(1次選考)
申込み要件に定めている、「助成対象者」および「助成対象事業」に適合しているかの審査が行われます。
(2)書面審査(2次選考)
申込み提出した申請書にもとづき審査が行われます。ここでは例として事業化助成金のケースを見ることで、助成の対象となる事業の特色が明確になってきます。
申請書作成上の重要項目は次の通りです。
【対象事業終了後、数年以内での事業化可能性】
対象となる研究開発事業の終了時における到達目標とそれに至る根拠が問われます。客観的と判断される目標を掲げ、それを実行するための実現可能な体制作りが求められます。
さらに一般的には、対象事業の終了後(研究開発・試作品完成等)、製品や商品をビジネスとして軌道に乗せ、流通させてゆくのプロセス(事業化)を明記することとなります。
【新規性・成長性】
技術的および製品的な側面から、研究開発の新規性が問われます。
プロジェクトの類似事業分野における製品の技術水準の現状、問題点等から、どのような課題があり、解決手段としての当該プロジェクトの斬新性や他社との違いはどのようなものであり、その上で、結果としての有効性等を明確に示すことになります。
また、当該プロジェクトの成果や新商品・製品への市場の潜在ニーズの高さや、自社の市場開拓可能性を明らかにすることで、プロジェクトの有益性を訴求します。
この場合、特許等の取得は審査上有利な材料になります。
【事業遂行能力等】
社内実施体制、従事者の経験・能力、社外協力体制等、どのような組織体制でプロジェクトに取り組んでいくのかが問われます。
現状にのみならず、プロジェクトの成果を向上させるような、今後のノウハウ習得の予定や、将来の社外の有力提携先などがあれば、積極的に記述します。
また、プロジェクトに掛かる総事業費が、財務内容および調達資金計画からみて無理のないものであるかを、融資等の助成金以外の資金調達計画などにより、その妥当性が評価されます。
この場合、通常、過去数年間の決算関係書類の提出を求められますが、自社における財務面での問題点等があれば、今後の改善策を検討し、明示する必要があります。
EX)資金繰り対策、利益率の改善
国が一企業に対して、大切な税金を補助金を通じて投資するわけですから、事業遂行能力の尺度となる企業の財務健全性が重要なことは言うまでもありません。
財務的に問題があるとみなされる企業の場合、採択されない可能性が高いので、事業計画同様な事前における緻密な計画策定が要求されます。
下記は現在実施されている代表的な助成金制度の「応募者の要件(例)」ですが、これより、財務基盤の安定性およびそれにもとづく事業遂行能力が強く求められていることがわかります。
【応募者の要件(例)】
・助成対象事業を的確に遂行するに足る技術的能力を有すること。
・助成対象事業を的確に遂行するために必要な費用のうち、自己負担分の調達に関し充分な財務的基礎を有すること。
・助成対象事業に係る経理その他の事務について、的確な管理体制および処理能力を有すること。
・助成対象事業終了後の実用化を達成するために必要な能力を有すること。
・技術に関する研究及び開発の成果を経営において他の経営資源と組み合わせて有効に活用できること
・将来の事業内容を展望して研究及び開発を計画的に展開する能力を有することにより、イノベーションを実現する可能性を有すること
【社会貢献性】
公的資金の活用においては常に要求される事項です。
代表的なものとして、環境配慮や健康志向、高齢者対応などがありますが、ビジネスモデルを構築する際に、基本となるコンセプトとしてその思想を反映させておくことが肝要です。
(3)面接審査(3次選考)
書面審査の通過後、最終審査として一般的に面接審査が行われます。プレゼンテーションおよびヒアリングが実施され、プロジェクトの実行力が問われます。
※面接審査の有無は制度によって異なります。

■補足説明資料について
補足説明資料では、以下の内容を中心に記述していきます。
●申請書に記述したプロジェクト内容に関して、より具体的な詳細な取り組み内容
●業界特有の専門用語など、わかりにくい用語に関する補足説明
補足説明は詳しすぎるぐらいで、実際は丁度よいぐらいになるかと思います。
私の場合、申請書作成のお手伝いをする上で、まず最初に事業内容についてヒアリングを行いますが、その場ですべて理解するのはかなり難しいものです。
どれほど素晴らしい事業構想であっても、それが第三者に対して正確に伝わらなければ、それは無意味となります。
助成金の審査員は、申請企業の業界事情や動向や商品・製品内容に対し、必ずしも深い認識があるわけではなく、その点を念頭に書類作成を進めることが重要です。
申請書の作成の過程で、必ず第三者的な視点で上記のチェックを入れましょう。
■質問の題意に沿った記述を心がける
何を当たり前のことを?、と思われた方も多いことと思います。
通常、申請書への記載事項は膨大な量になります。また、質問事項には、似たような内容に関して切り口を変えて聞いてくるものが多くあります。
殆どの事業主の方にとって、これらは不慣れな面倒な作業となります。
書き込みを進めていく中で、気付かないうちに同様な内容を重複して記述していたり、文章の前後関係を無視した記述になり、気を付けているつもりでも、結果的に質問内容にそぐわない記述になりがちです。
このような誤った記述で申請すれば、事業内容の良し悪し以前の問題として、承認されることは極めて難しいものとなります。
質問内容を正確に理解した上で、申請書へ記述内容を適切に割り振ることが求められる、と言えます。
図表を効果的に使用するなど、情報を解りやすく審査員に伝えるための工夫も大切になります。
新規事業への取り組みが旺盛で、かつ助成金活用への挑戦意欲が高く、これまでに何度も研究開発系の助成金(補助金)の受給実績のある会社が存在します。
助成金申請書の記入スタイルは、多少の違いはあれ、どの制度も基本的な記入スタイルは類似しています。受給実績のある会社は、申請書記入上の要点を把握しており、その後の申請機会においても好結果へと繋がるようです。
敷居が高いからといって敬遠するのではなく、先ずは挑戦してみるという姿勢が大切です。

ここでは、助成金を活用してプロジェクトを成功させるためのポイントを挙げてみます。
■助成金も含めた資金調達全体の計画を確認する
助成金の対象となる研究開発プロジェクトを実行する場合、通常、事業総額は数千万円以上になる場合が殆どです。
これに対し、先にお話したとおり(「対象となる事業費(経費費目)」)、そのうちの一部の事業費を対象として補助金額が算定、支給されます。
算定は、
対象となる研究開発事業費×補助率(1/2や2/3など助成金ごとに異なる)
で算定される金額です。
したがって、助成金を受給出来るからといっても、プロジェクトの開始直後からの数年間に発生する経費に対しては、何らかの資金調達手段によってカバーする必要があります。
また、いくらプロジェクトの内容に自信があったとしても、一般的な承認率が10〜20%程度の助成金を全面的にあてにするのは極めて危険な行為です。
助成金の承認が下りなかった時の他の資金調達手段として、民間融資等の代替手段を事前に検討しておくことが不可欠と言えます。
■経営革新計画認定で研究開発事業費資金をカバーする
前述の通り、助成金の支給は一般的にプロジェクトの完了後、清算払いの形で支払われ、 従って、期間中の研究開発に伴う費用負担に対しては、自己資金もしくは融資等による外部からの資金調達が必要となります。
企業が新らたに、商品・製品やサービスの開発に取り組んだ場合などに、この経営革新計画の認定を受けることが可能となり、承認を受ける事で、無利子融資や通常の枠とは別枠での長期で低金利の公的融資の事業資金への幅広い公的支援策の利用が可能となります。
私自身の経験からも、経営革新計画の認定を得ることは一般的に助成金の選考よりハードルが低いこともあり、製品開発や研究開発といった取り組みの多くのケースで、経営革新計画承認の対象となることが期待できると言えます。
申請内容は、新規プロジェクトに関する事業計画や資金調達計画の作成がメインで、一般的な助成金の申請内容に類似するもので、商品開発等で助成金の活用を検討している会社における、研究開発に伴う資金面での課題を解決する手段として、経営革新計画の認定は有効な手段となります。
■経営革新計画認定に伴う企業への支援策(融資・税制・補助金等)の詳細
■経営革新計画認定企業を対象とした補助金・助成金制度も活用できる
経営革新認定企業を対象とし、都道府県単位で様々な補助金・助成金制度を用意しているケースも多く、認定企業の事業推進が図られています。
経営革新認定企業を対象とした補助金・助成金制度(全国)はこちら

ものづくり関連支援制度(助成金等)の新たな活用方法について
特定ものづくりの基盤技術(※)の開発に携わる中小企業製造業の新商品開発等を支援する補助金制度として、平成21年度まで募集が行われていた「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金」は、平成22年度においては、行政刷新会議による事業仕分けの対象となったことから、戦略的基盤技術高度化支援事業に統合される形となり、本年度の募集は行われないこととなっています。
従って今後、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律」をベースとした特定ものづくりの基盤技術への支援(研究費補助)を受けるためには、現状では戦略的基盤技術高度化支援事業をの利用を視野に入れ、「特定研究開発等計画の認定における認定申請」で大臣認定を受けていることが不可欠となります。
戦略的基盤技術高度化支援事業のへの申請時に、同時に「特定研究開発等計画の認定における認定申請」を行うことも可能ですが、この場合、申請に伴う作業負担が極めて大きいことから、認定申請手続きを先行して進められることをお勧めします。
■戦略的基盤技術高度化支援事業の特徴
戦略的基盤技術高度化支援事業は国からの研究委託という形式で行われることから、従来のものづくり中小企業製品開発等支援補助金に比べて、技術面での広範囲な波及効果など、採択要件もより広範囲に渡り、厳しくなっています。
@事業管理機関を始め、取引先などを含めた共同体による研究開発体制が、申請における基本形態となる。
A技術の新規性や独創性などの「技術面」、事業計画の達成力(財務力含む)や経済効果などの「事業性」、中小企業政策との適合性などの「政策性」の他、製造業の国際競争力強化への影響度など多方面での評価がなされる。
このほか、「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金」と同様、研究開発目標の課題とその解決方法が具体的で明確になっているかという点についても重点審査項目となります。
なお上記の審査項目においては、特定研究開発の認定時の審査項目と重複する点があります。
■特定研究開発計画の認定制度
経済産業大臣指定する「特定ものづくり基盤技術」において 「特定ものづくり基盤技術高度化指針」に合致する研究開発を対象として認定が行われるもので、認定を受けることで、下記の支援措置を受けることが可能
・政府系金融機関による公的融資
・通常保証とは別枠の特別保証
・特許化に係る特例措置(審査請求手数料の半額、1年から6年分の特許料の半額)
・戦略的基盤技術高度化支援事業への申請
(※)当事務所では、特定研究開発計画認定の申請をサポートしています。
自社での研究開発で戦略的基盤技術高度化支援事業の活用をご検討中の企業様等、お気軽にご相談ください。
アームドマネジメント・サポート:愛知県名古屋市
(経済産業大臣登録 中小企業診断士事務所)
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